2018年12月20日

多世代まちづくりプロジェクト コンペReport

認知症フレンドシップクラブの地域活動拠点である事務局と学生の多世代でチャレンジする「多世代まちづくりプロジェクト(学生と共に考える認知症にやさしいまちづくり)」。
12月15日、はじめての開催となるコンペティションを大阪で行ないました。

■ 企画意図について(若野理事)
「たくさんの学生に調査研究として来てもらうことで気づいたことは、素晴らしい研究の多くが、学内や図書館で眠っていること。地域の人に知ってもらうための“発表の場を作りたい”と考えました。認知症の研究をしたい学生が、地域で活動する人と出会う機会があれば、お互いにメリットになるはずです。
認知症フレンドシップクラブの事務局として活動フィールドを持つメンバーと、研究テーマを持つ学生がつながることをめざし、「多世代まちづくりプロジェクト」を企画しました。
認知症の研究をしたい時には、“認知症フレンドシップクラブに連絡をとってみよう!”と思われるような団体になりたい。今回は、自分たちも初めてのイベントでチャレンジする気持ちなので、学生の皆さんも、思いの丈を、時間を気にせず語って欲しい!(笑)」と声援を送りました。

審査員の方の紹介の後、参加者の方に「コメントシート」について説明し、全プロジェクトへの応援や感想を記入してもらいました。
2部門ともに、1つのプロジェクトへの助成を決定するコンペティションスタイルで、審査員の得点で決定します。

■ 最初のプレゼンは、「実践部門」です。
すでに実践している事務局の活動を、さらに推進させるため、学生と共に新たなアイディアを考え実践していくプロジェクトが応募できます。


1、認知症になっても楽しめる農業プロジェクト(近畿大学×奈良事務局)
農業と福祉の「農福連携」を行なっているが、草刈りや耕す作業は学生でも大変。認知症の人と一緒にできる農業をめざして近代的な農法「レイズドベット(高くした畑)」を活用したい。その上で、ハーブなどを取り入れて効果の検証を実施。認知症の方には農業によるやりがいがうまれ、認知機能の改善につながるか研究を深めたい。事務局には学生参加によって、地域活動の見える化につながるのではないか。
審査員や会場からは、収穫作物の活用方法や、機能改善の測定などの具体的な質問と、他の事例も含めた提案が寄せられました。


2、認知症フレンドリーな社会を目指したパターン・ランゲージ活用プロジェクト(慶応義塾大学×魚沼・横浜・西香川事務局)
パンターン・ランゲージという、誰でも分かりやすく理解できる手法を用いて、認知症フレンドリーを誰でも考えられる社会にしていきたい。その実現のために、うまく実践している地域の取り組みを他でも取り入れられるように、コミュニケーションツールを作り支援をめざす。既に、魚沼事務局と認知症当事者の言葉を使った百人一首をテスト作成し、カフェやワークショップで活用した。多くの人が理解できる仕組みとして、冊子や百人一首の作成を行い複数の地域で実践したい。現場のフィードバックにより研究が具体化し、事務局は新しいアクションを実現する機会になるだろう。
審査員からは、社会課題解決のコツがつかめそう、展開の仕方によって子どもや近所の人など多くの層を巻き込める、という視点が出ました。

■ 「チャレンジ部門」は、まだ始まっていない活動について、事務局と学生が一緒に実践できるアイディアを考える部門です。
これからスタートするプロジェクトとして、発表時間は短く設定されています。


1、オレンジポストプロジェクト(近畿大学×奈良事務局)
認知症の悩みや相談事を人知れずつぶやけるようなポストを作りたい。もし、匿名で文通などできれば、素敵なつながりになる。


2、認知症の理解を促す標語をつくる(森ノ宮医療大学×豊中事務局)
認知症の偏見をなくす、当事者の思いを伝える標語を作りたい。標語作りや発信から、学生が認知症の人と地域をつなぐ、世代を超えた標語をめざしたい。


3、ハッピーケア・プロジェクト(東京工科大学×町田事務局)
介護ストレスを抱く人70%の調査結果から、ストレスを感じない30%にも注目したい。共通点や分岐点を明確にし、介護者が幸せに暮らせるコツをまとめた冊子を作りたい。


4、香り付き立体パズルは脳血流量を増やすことができるか(近畿大学×奈良事務局)
認知症の人に、香りが付いた立体パズルを組み立ててもらい、種類と状態により脳血流量の変化を調査。当事者と考えながら、生活の改善に向けて広げていきたい。


コンパクトにまとめられたプレゼンは、どれも視点が面白く、一緒に取り組みたくなるものばかり。突っ込みどころもたくさん見られる荒削りな部分も含めて、若者の勢いを感じるコンペになりました。
開催したことによる発見は、同じ視点で研究をめざす学生も多くいたことです。学生と地域活動をする人のマッチングだけでなく、認知症にやさしい社会の実現をめざす学生同士の出会いの機会につながれば嬉しく思います。


■ 結果発表
・実践部門 「農業プロジェクト」
・チャレンジ部門 「オレンジポスト」
※決定プロジェクトのその後の報告も含め、これからも発信していきます。

学生の皆さんのプレゼンを聞いた会場の参加者からは、「未来を明るく感じた」「学生が思いを語る真剣な姿に感動した」「自分たちも頑張りたい」という、エネルギーを得たコメントが多く寄せれました。

今回、初開催による準備不足もあり、発表いただいた学生の皆さんにもご負担あったかと思います。申し訳ありません。また、全プロジェクトへの支援が難しいことも課題です。
これから、どのような形で多世代まちづくりを実現していけるか改めて考えて参ります。

何より、みなさんの感想からも、若者と未来のまちづくりをコラボする手応えを感じられるイベントになりました。ご参加ご協力いただいた皆さまに、心より御礼申し上げます。
本当にありがとうございました!


本コンペティションで学生が発表したプロジェクトは、学生と事務局が精一杯考え発表しました。
発表プロジェクトのアイディアをもとにした活動や事業化を考えている方は、認知症フレンドシップクラブまでご連絡をいただけましたら幸いです。
ご連絡は、お問合せフォームよりお願いいたします。
http://dfc.or.jp/contact